ザックリこんな記事
- [「プロトタイプに挑戦しよう」への違和感]からお話しをはじめます。
- プロトタイプにはCMSやフレームワークを活かさない手はないですね。
- レイトマジョリティ向けにはそれの制作アプローチがあります。
- 教育成長型コンテンツ制作をしていく必要がありますよ。
- 日本の会社は9割以上が中小企業なんだから制作会社はスタンス考えてみては?
- Web制作は「オーダー」ではなく「オファー」何だってコトを共通認識にしましょう。
今回は少しWeb”制作”よりなお話しです。前半は経営者層な読者さんにはちょっと難しいお話しが入るかも知れませんが頑張ってついてきてくださいね。
先週末、CSS Nite LP, Disk 25:Webデザイン行く年来る年(Shift6)というセミナーイベントへ参加してきました。Web制作の第一線を走っているみなさんのホントにすばらしい内容のセミナーでした。
今回はその中で提起されていたお話しからスタートします。
「プロトタイプに挑戦しよう」への違和感
そのなかで最初に行われた、長谷川恭久さんによる基調講演でのはなしです。
主意としては「今後はデザインカンプをみて話をするモデルからプロトタイプを制作していくスタイルへの変換が必要」という話だったこと解釈しています。
正直なところ、この話と、このセンテンスに「おーっ」て盛りあがっている会場に対して個人的には違和感を感じました。(あくまで個人的にです。)
自分はここ2年ぐらいの案件で、デザインカンプってもんはつくったことない.. #cssnite_shift6
— esshi ishiiさん (@esstwi) 12月 15, 2012
とツイートしてしまったくらいでした。
一般的には制作者の皆さんは、まずはカンプをつくるものなのでしょうか?
デザインを軽視しすぎな発言?
こういうことを言うと、失言だとか、デザインワークを軽視して何言ってるんだコイツ?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
一応わたしはデザイン系の大学を卒業していますし、企画系の印刷会社でDTPをバリバリにやっていた職歴もあります。なので、本来ならヴィジュアル的なデザインは最重視したいのです。詰まっていない文字などを見れば、字詰めしたくてウズウズする派の人間です。
とはいえ、イマドキWeb制作界隈では盛んなIAとかUXなどに裏打ちされるとおり、「えづら」は最重要と言うポジショニングは違ってきているのではないでしょうか。よって、IAとかUXと盛んに叫ばれていルと思います。なのに何故まだカンプをつくって....的な発想の空気が占めていて、それへのインプレッションとなっていたことに違和感を感じたのでした。
わたしがカンプをつくるとしたら、ローンチ1週間前
では、おまえは一体どういうフローで制作をしているんだ?と言いたくなりますよね? ここ4年来、わたしがお世話になっているクライアントに対し、次の制作アプローチでイニシャル対応しています。
- CMSを導入する(プレーンなままインストール)
- (Webなテキストの特性を踏まえた)書き方を教える
- 記事をとりあえず入れてもらう
- 書いていただいた記事をもとに、何が訴えたいのかを共に探る
- コンテンツに即した表現の記事へと共にリライトする
- 実モックカスタマイズしながらUXなどを共に試す
- アートワーク
- CMSカスタマイズ
- ローンチ
- 順次サイト改良や日次的なウィジェットの追加
- 定期的な運用コンサル(だいたい半月〜月イチで改良会議)
と、こんな流れです。 いわゆる、一般的な制作会社の制作フローというモノとはほとんど無縁です。 何故こんなフローなのかは後述するとして、ここ数年わたしが直接携わってきた数十のサイトは こうやって制作してきています。もし、ここで会えてカンプをつくるとしたら7番目ぐらいのフェーズに到達しないとカンプデザインは不可能なのです。
よって、長谷川恭久さんが基調講演で仰っていた、
カンプがないとクライアントは理解してくれないは否
は正しいことでありよくわかります。そしてわたしは何年も前から実践しています。
何のためのCMSやフレームワークなのか
ココまでをご覧いただいた段階では、めんどくさい流れで仕事してるな、すごい手間じゃないの?と思いませんでしたか?しかしそれは、昨今ではすごく楽になりました。よって否だと思います。
CMSはノーカスタマイズからが基本
少し具体的なレイヤーの話をしますが、わたしの制作フローの最初でCMSを導入すると書きました。この段階ではWordPressであれ、MTであれ、a-blog cms であれ、Jimdo であれ、Tumblrであれ事後カスタマイズが可能なものをdefaultのテーマのままでインストール〜導入しています。
そして、まずは「クライアント自体が書くこと」を達成します。
そこでカスタマイズをしない状態でCMSに要求することは、次の項目なのです。
正しくこれらを加味して、「Webに記事が書けるようになってもらう」ことがなければ何も始まらないと考えています。
よって、最初から編集側のカスタマイズする労力を使わずに、これを満たしているCMSを導入することが望ましいと考えています。そうなると良くも悪くも、いまのところはそれを満たしてくれるソリューションは、a-blog cms という結論に行き着いているところです。
(その次はtumblerかな。他にもいろいろ間口を広げておきたいので、もしほかのソリューションでよりよいモノをご存じの方がいらっしゃいましたら、右下のメッセージリーフからなどで教えてください。)
最近はCSSフレームワークの台頭でハードルが低くなった
クライアントが記事を書くことができるようになったら、記事を書き上げていただくあいだに平行して実モックカスタマイズをやりやすい環境を準備を整えます。ココで始めてCMS自体をいじりはじめます。
そこで重宝するのが、Bootstrapです。静的コンテンツにモジュール組み込み型のCMSを導入していれば、ゾーニングもユーザー体験のしくみも、実際の記事が入った状態でクライアントと共に体験しながら、ライブでくみ上げていくことが可能ですね。
この段階で話をしながら段組がころころ変わることもありますし、サイトの階層構造もころころ変わります。この段階でそういったコロコロ変わる状況に対応出来るのは、単独記事の集まりであるCMSサイトと数行変更すればUX的な変更が比較的楽に可能なこの組み合わせならではのメリットと言えます。(現段階では、a-blog cms×Bootstrap のプロトタイピングが自分のようなスクリプトも書けない人間でも可能なソリューションといえます。)
当然ある程度の時間線引きはしますが、このフェーズで実際に遷移しながらコンテンツを整えていけることで、残念なボツカンプ的な自体は全く起こらないスタンスで制作が進められます。これだけフレームワークが台頭している昨今、実際にプロトタイプで納得を得た方がカンプ造りをするよりよっぽど工数もかけずにコンセンサスもとれないでしょうか?
レイトマジョリティ向けなアプローチ
ここまでお話ししてきた、わたしの実践しているフローは、お気づきの方も多いと思いますがイニシャルの時間をかなり必要とします。これではデメリットですよね?そして、なんでそんな変なコトやってるんだ?ともお感じになりますよね?
理由はちゃんとあります。わたしはレイトマジョリティ層(=地方の後発な中小企業・個人商店主向け)のコンテンツプロデュースをメインにしているからです。
すべてがそうではありませんが、この層の大抵のクライアントさんは、アーリーマジョリティ層までとは異なりこれまであまりICTどころか、PCにすら触れてきていません。
「パソコンとか使いこなせなせるひとはいいよね」「ブランディング?そんなことしてもお金になるのか?」という状況です。リテラシーはとても低いのです。
しかし、彼らほどコンテンツがユニークで、コアコンピタンスの原石を持っているセグメントはないと感じています。
ただこれまでICTに接する機会がなかっただけで、ブランディングを上手にして貰う機会に出逢わなかっただけなのです。
「教育成長型なWebコンテンツ制作」へ
だからまずは、ITリテラシを向上することが必要なのです。そして、潜在的に持っているコンテンツをアウトプットして貰い、整理して発信できる環境を整える。そのために「Webサイトをつくる」という行為が大事な位置づけを果たすと考えています。
制作者側も、クライアントとなる経営者層も、ただ「ホームページつくった」ではなく、「Webサイトを通じて自社のコンテンツをメディア化する」と言う意識を持って欲しいと思います。これがオウンドメディアのベース構築へと繋がるはずです。
日本の会社は9割以上が中小企業なんだから
こういう言い方をしてしまうと、何とも理想郷的な世界へと行ってしまいそうですよね。正直商売っ気もないでしょうし。すぐにはお金には成りません。
しかし、よく考えてみてください。日本の全企業数に占める中小企業の割合は99.7%なのです。
企業がWebサイトを持つと言うことが確立して、十数年になります。それでもまだ尚、エンタープライズなデザイン(アートワーク)カンプを必死につくって、プロポーザルに挑んで0.3%のパイを争うところにだけ乗っかっていきますか?大企業サイトの制作の孫請け玄孫請けをいつまで続けるのですか? 最初は収益性は低いのは承知で、教育成長型なWebコンテンツ制作をして、長期的に着実にお付き合いできるクライアントを増やす路線も拡充する時期ではないですか?
世の中にはWeb制作者に都合の良いITリテラシーも高ければ、ブランド保全意識の高いクライアントばかり世の中には存在しないでしょう。 旧態依然のままでは、もしまた、リーマンショック的な出来事でもあれば、制作会社も運命共同体になりませんか。
・・・こう言ってしまうとイマドキの制作方式や制作者を否定しているっぽく聞こえてしまっていたらごめんなさい。そう言うポジションのひとも必要です。
そしてわたしは、自身がお世話になっている企業さんたちであっても、リテラシやコンテンツが育ったなら、もっとエンタープライズなベンダーへ依頼することもいつも視野に入れています。
みんな役割がそれぞれあるのです。 それは承知しています。
それを加味した上ででも思うのですが、企業の分布割合や、レートマジョリティ層の開拓という観点から言えば、もっと制作会社にはわたしのようなスタンスの役割の人が増えても良いような気がしているのです。
Web制作は「オーダー」ではなく「オファー」です
さいごに、この考え方を制作者側も、クライアントとなる経営者層も、持っていただきたいと思います。「Webサイトをつくる」ということは「自社のコンテンツを整える」ということなのです。 単発で美しい画を買うのではありません。自社の将来を共に描くのです。 このルールがもっとあたりまえな共通認識となり、良質なWeb制作〜サイト運営(=企業運営)が進んでいって欲しいものですね。