私は普段、GTD という仕事術(整理術)を活用しています。GTD を取り入れるようになって、5年ぐらいになります。 先日学んだセミナーで、GTDとPDCAサイクルの類似点を考えるきっかけがありました。 PDCA サイクルにGTD はとても有効であることに気づきました。そこで今回は、その使い処や親和性について書いていきます。(約8,000文字:超長いのでじっくりどうぞ)
PDCA サイクルを学び直した
今年は月イチで「経営者のための営業売り上げUP倶楽部」という通年セミナーを受講しています。5回目のテーマとして、PDCA をあらためて学ぶ機会となりました。
多少でもビジネスをしているひとであれば、P、D、C、A の四つの文字と一緒に、Plan、Do、Check、Act の単語が載った、サイクロン上になった矢印の図(デミングサイクル図)などは目にしたことがあると思います。 そして、このデミングサイクル図は、コトあるごとに研修や教育で用いられていることはよく知られています。
PDCA サイクルをまわす術としてのGTD
セミナーのなかで、3時間程度じっくりと実践しながらPDCA について再学習しました。あらためてPDCA への理解を深めることになりました。その結果、普段の業務で実践しているGTD が、Do以降(Todo タスキング以降)のステップにおいて、すさまじく効果的な手法であったことに気付きました。
GTD とはなにか
GTD とは、Getting Things Done (= ゲッティング・シングス・ダン)の頭文字を取ったものです。省略語ではありますが、PDCA と同じくIT用語ではありません。この手法は専らアナログベースで確立されてきているライフハック(整理法であり仕事術)です。
このGTD は、個人と組織の生産性に関する世界的な権威とされる、David Allen(デビッド・アレン)氏によって確立された手法です。
GTD を要約してみると
ザックリと石井さん的に要約すると次の通りだと思います。
- Todo やタスク管理において5つのステップ(収集・処理・整理・見直し・実行)を成し遂げる手法です。
- まずはやることを全て脳の外へと掃き出すことから始まります。
- やるべきことをたくさん記憶しておくストレスから脳を開放します。
- 掃き出したタスクは単一な工程(シングルタスク)になるところまで細分化してリストアップします。
- ストレスフリーな状態の脳で、集中して細分化したタスクを成し遂げていきます。
- 細かなタスクを処理していくことで、「できた」という確認を脳に認識させることができます。
- 定期的に、実行してできたもの、できてないもの、を見直します。
- このサイクルを実践していくことで高い生産性をもって物事が成し遂げられていきます。
詳しい情報は、Wikipedia や gtd Japan などの正規度が高いサイトでご確認いただければと思います。
Getting Things Done - Wikipedia
GTD®とは - 日本唯一のGTD公式サイト。GTD Japan
わかりやすいGTD フローの図
OmniFocus(というGTDツール) のマニュアル では、わかりやすくフローにした図が載っています。
非常にわかりやすいのでキャプチャしたものを掲載しておきたいと思います。
この図の流れの通りにこなしていくと、GTD を実践することができると思います。
GTD のツール
GTDは元来、安価な紙、クリップ、手帳などを使用して行っていた手法です。 しかし昨今はデジタルどころか、クラウド全盛な時代です。その時代や手元にあるツール、端末に則し、GTD のツールもさまざまなところで開発されています。 それらツールは主にPCやスマホ用のアプリとして提供されています。 そのアプリも大きく次のように分類ができます。
GTD フローに忠実なツール
提唱されているGTD の正規フローに則ったツールとして、OmniFocus(オムニフォーカス) や Nozbe(ノズビー) と言うソリューションがあります。
GTD をやりやすいTodo ツール
普段Todo アプリを利用している方もいらっしゃると思います。Todo ツールのうえで、GTD の手法を実践して使う方法もあります。その場合は、Toodledo (トゥードゥードゥル)や Things (シングス)といったツールやクラウドソリューションがよく使われているようです。
なじみのあるツールでGTD を実践する
ビジネスをしているひとなら、一般的に馴染みのあるツールの、サイボウズLive や、Evernote を利用してGTD を実践しているひともいらっしゃるようです。
PDCA サイクルにGTDが効果的な例
わたしはGTD を実践し始めて約5年ぐらいになります。当初はOmniFocus を利用していました。それから以前このブログでも書いたとおりの経緯があり、Nozbe というソリューションを採用するに至っています。
Nozbe でGTD
このNobe というソリューションはMac、PC、iPhone、Android、Webなど、クラウドを経由して幅広い端末から利用することができます。そして他のツールよりもすばらしいところがあります。それは、共有でのワークフロー管理ができることです。もともとGTDは、個人用のワークフローの管理手法な要素が強いライフハックです。それを他者と共有して行えることはイマドキの、ネットコミュニケーション主流の時代には大きなポイントだと思っています。
GTD の使い方がわかる
ライフハックの手法は実業務に直結す要素がたくさんあります。そのため理解して活用しなければ実業務が余計に滞ってしまう事態を引き起こしかねません。中途半端な理解とツール操作のスキルのままで、ライフハックに取り組むことはとてもリスクが高いと言えます。この点が気になって、なかなか導入できないでいると言う方もいらっしゃると思います。 Nobe のサイトではその辺りの導入のサポートがとても充実しています。
「生産性を高めるための10ステップ」
特にその中に「生産性を高めるための10ステップ」と題されたステップアップビデオが用意されています。 このビデオではNozbe のツールそのものの使い方だけではなく、GTD 自体のやり方を解説しています。ビデオの中でもスタッフが「他のツールでもOK」とまで語っています。 自社ツールよりも大きな枠から俯瞰して解説されているビデオとなっています。 仮にこのツールを使わないとしても、GTD が気になっていると言う方は、一度騙されたと思ってご覧になっていただいても損はない内容だと思います。
Nozbe でGTD を取り入れてから変わったこと
私の場合はGTD が生活の根幹になっています。そう言っても過言ではありません。 少なからず自分の生活をあえてタスクリストに委ねているところはあります。しかしここまで続いてきたのですから親和性も悪くないのだと思っています。そんなGTD と言う手法を取り入れてみて変わったことを思い返してみました。
忙殺されなくなった
やるべきことを記憶の外へ全てストックしてしまうことで、外部的なのタスクに振り回され無くなりました。 GTD では一律にやることが視覚的に羅列された状態をつくることができます。そして一律的にこなしていけます。こなせなくても、にこなすための修正を入れることができます。その結果、自分がやりたいこと(内部的なタスク)が後回しになったり、やれなかったりという状況に陥りにくくなりました。
作業漏れが無くなった
デジタルベースでGTD を実践することによるメリットとして、定期的なタスクは自動化されるという利点があります。そのおかげで、毎日、毎週、毎月、毎年と言った具合のタスクは、リピートでリストアップされてくれます。半年に1度や年に1度などといった、タスクを漏らさずにいられる安心感はとても大きいと言えます。そして、これらの繰り返しタスクを覚えておくというストレスからも解放されています。
対応スピードが上がった
これもデジタルベースでのGTD のメリットですが、単純にその日やることだけが自動的にピックアップされオーダーリストのように列んでくれます。そして所要合計時間の見込みも自動的に計算されます。 タスクごとの時間ボリュームも視覚化されるため、どれから成し遂げて終えていけば良いかの目算がつけやすくなりました。おかげで難しく計画立てて順番を考えることも少なく済みます。淡々と上がってきている簡単なシングルタスクをこなすことでその日にやるべきことは終わっていきます。その結果、タスクの滞りとそれによるストレスからも解放されています。
安心とゆとりができた
GTD の目的として”生産性を高める”、”ストレスフリー”が大きく掲げられています。まさにその通りで、「アレをやらなければコレをやらなければ...」といった視覚化できていない焦りからは脱却することができています。その結果、忙しぶらないようになりました。 また、仕事と生活の全てをタスクとして登録することで、仕事に偏ったり、プライベートに偏ったりする不均衡からも脱却できています。「私の人生は仕事だけなの」的なライフスタイルの回善にも役立つと思います。
PDCAにGTDが有効なところ
セミナーのなかでPDCA の各項目で何をポイントとして押さえなければならないかを見ていきました。
その項目を確認していけばしていくほど、特に"DCA" のポイントとなる部分はGTD 実践そのものだと感じました。主な部分を挙げていきます。
Plan = タスクグループ追加・タスクの追加
Plan(計画)で目標設定をして書き出していきます。これはGTD で言えば タスクを追加していく行為そのものと言えます。
- 成果目標の設定 ⇒ タスクグループ(Nozbe ではプロジェクトという)の追加をする行為
- 行動(プロセス)設定 ⇒ プロジェクトの中にタスクの追加していく行為
Do = タスクの細分化〜処理
人の脳は複数のタスク処理をすると脳の処理能力が分散して低下する。これは科学的にも解明され、よく知られるに至っていると思います。すなわち単工程化(シングルタスク化)し、処理することが求められます。 これはGTD に置き換えるとタスクの細分化です。すでに追加したタスクが複数工程になっていないかをチェックします。そして単独な工程にできるところまでタスクを分解していきます。分解ができたら、それらに詰まることなく、淡々と処理していくことで、高い生産性を発揮することができます。
Check = リピートタスクの管理と処理
ToDo 的な視点として、月単位でやるべきことのピックアップ、毎週単位でやるべきことのピックアップ、毎日やるべきことのピックアップも Check のステップでは大切な要素となります。 GTD ツールでは、一度決めてしまえばリピートタスクとして管理し成し遂げていくことができます。自動化ができることで、漏れやミスを減らしストレスフリーに貢献できます。
Act:マインドセット
セミナーでは「決めました」→「やりました」→「できました」の実現ができたら、自分に必ずご褒美をあげることと学びました。 「達成するとよいことがある」と自分にインプットする習慣を意識的にしていくと言う話しがありました。 GTD では、毎日、その日のタスクを空にすることが「できました」になります。 そしてなにより視覚的な認知としてとてもわかりやすいのです。毎日からにするために、しっかり進めていけば良いのです。 この話を聞くより以前から、その日のタスクが空になったときにはとてもスッキリした心地よい気分になる体験は何度となくしてきました。ここも達成めんでは大きく通じる大切な要素だと思います。
目標を達成するために大切な部分は共通している
PDCA で重要であると学んだポイントとGTD でキモとなるテクニックは通じる部分がたくさんありました。今まで何の気なしにPDCA と言う言葉だけが独り歩きし、平素のGTD の実践もしていました。それぞれが、それぞれのままに過ぎてしまっていたら、この共通項には気付くことはできなかったと思います。
"DCA"はさらにポモドーロテクニックで強力に
セミナーのあとで、PDCA も、GTD も目標達成のために重要となるエッセンスは通じるものがあることの認識ができました。しかしそれらは、あくまでも枠組みの話しです。そして、どれだけ立派な枠組みや手法があっても、それに取り組む人間のモチベーションや脳の意識がその方向を向かなければ意味をなしません。
とは言え人間である以上、どうしても気分が乗らない時もあると思います。そんな時にはポモドーロテクニックを使うことがとても強力です。スタートダッシュとして大変有効な手法です。
ポモドーロテクニックとは
ポモドーロテクニックは、端的に言えば、時間管理術です。人間の集中できる時間は短期集中で30分程度とされています。よく頑張っても90分が限界と言われています。その短時間を対象とした小回りの利く時間管理手法です。これが「アジャイルな時間管理術」と呼ばれる所以です。 ポモドーロとはイタリア語で「トマト」のことです。このテクニックを確立したフランチェスコ・チェリーロが実験検証をしていく中で、タイマーが必要となります。その時偶然に目に入ったのが、トマト型をしたキッチンタイマーだったところから名前が由来しています。
キッチンタイマーでOK だけど
この手法もキッチンタイマーがあれば取り入れることはできます。しかし、GTD ツールと同じくデジタルベースなツールもたくさん出回っています。Mac、PC、iPhone、Android のアプリとしてもたくさん存在しています。気になった方はアプリストアなどで「ポモドーロ」と検索してみるとよいと思います。
集中的に時間を区切ってタスクをこなす
- このテクニックは25分の間一切の外部刺激をシャットアウトしてタスクを処理することに集中します。
- 脇見でSNSをみたり、電話に出たり誰かと会話することも無い方がよいです。(実質は禁止する。)
- 25分のタイマーが回り終わったら、5分間、仕掛かりであろうと必ず休憩時間として手を休めます。
- このサイクルを4サイクル(2時間)こなします。
- 4サイクルしたら30分の休憩を入れる。
- こうして2時間の1クールでタスクを黙々と処理していきます。
時間の強制をつくることで、処理をするための脳をつくりあげていきます。 個人的には、このテクニックを1日やることはとてもヘビーで疲れすぎてしまうと感じています。 自分の経験上からは、午前中のみこのテクニックで取り組むことがベストでした。脳とカラダがその体制になってくれるところまで時間の拘束をかけることがこのテクニックの役目だと言う認識に至っています。 GTD ベースで毎日の成し遂げていくうえでは、取りかかりは重要な部分だと思います。 どうしても取りかかるきっかけがつかめない時には、GTD にポモドーロテクニックを組み合わることがとても強力な手法となるのです。
参考:すごく強力なGTD とポモドーロの手法
参考で紹介しますが、Nozbe 公式ブログにも ポモドーロテクニックとGTD の活用例は上がっています。この手法はとても強力な手法です。実際に画期的だと思い数ヶ月間やってみましたが、正直ここまで詰め込む必要はないと感じました。私の場合は、ツールと手法に疲れてしまいました。
Nozbeのテンプレートを使ってポモドーロテクニックとアンスケジュールカレンダーをうまく導入し生産的に! - NozbeブログでGTD
PDCA に則した目標達成×GTD は"P"が肝
ここまでPDCA とGTD の通じるところと有効なところをみてきました。そして前回のセミナー終了段階では、"DCA" の部分はGTD の実践が習慣になっていれば大筋ポイントは押さえられていることは再認識できました。 しかしここで気付きました。PDCA をほぼ、しっかりと回わせていているにもかかわらず、目標達成がめざましくないのはなぜなのか。その答えはこうでした。
「目標達成は目標設定で9割が決まる」そこに数字が入っているか
結局どれだけ手法が全うであっても、みるべき目標の具体性が欠けていたり、達成するべき目標の位置が低い状態では「やっている」止まりになるのです。真の意味として「できている」には至れないのです。
今回のPDCA をテーマとしたセミナーと、自分が5年来実践してきたGTD の習慣の親和性を探ってみた結果、気づけた一番大きなことは、目標設定がどれほどに重要であるかと言うことでした。 やたらと長くなってしまいましたが、記事としてアウトプットをしてみてよかったと思います。
逆を言えばGTD の実践を習慣づけることができれば、キッチリとした目標設定をすれば確実に達成できると言うことにもなります。そう考えるとGTD の実践やってきて良かったなとも思います。もし、気になった方はGTD をはじめてみてはいかがでしょうか。
GTD 実践はとりあえずここから
もし取り組んでみようと言う方は、まずは無理をしないでください。一気に転換しようとしないでください。少しずつ取り込んでみてください。
書籍的には「全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術」が鉄板だと思います。
1日10分ずつビデオを視よう
個人的には中盤でも紹介しましたが、「生産性を高めるための10ステップ」のシリーズビデオを、無理せず1日数分×10日視ることからが、無難な方法だと思います。このビデオは本当に体系立ててわかりやすく説明されていると思います。